しあつやのブログ

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パターン認識能力とは

パターン(規則性)認識能力というのは大脳の発達した人の最も得意分野とするところと言えるでしょう。

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<↑何と説明せずとも認識できますよね?これがパターン認識力です。>

他の動物もさることながら我々は昔から「経験」を元に行動し、さらにパターンを代々伝えています。

学習とは「こういう場合はこう」という一定のパターンによるものです。いつも通っている場所なら道に迷う事はありませんよね?これもパターンです。

文字や数字の読み書きもパターン認識です。東洋医学も西洋医学も同じくパターンによる学問です。

 

パターン認識能力は、毒草と薬草、敵と味方を区別すること、星々の位置から狩りや収穫の時期を見立てることに役立ち生存本能として発達し養われてきました。

パターン認識は、このように生存競争では有利に働きますが、同時に我々はパターンの無いところからでもパターンを見出そうとしてしまうことがあります。それを錯覚と言います。

錯覚には、例として古代の星占い(彗星や日食を何かの予兆と捉えたり)やお化け(木の節が目に見える)などがあります。ギャンブルなども胴元が上手くクライアントが錯覚するようパターン認識能力を利用しているとされています。

 

少し前にAlphaGoというAI(人工知能)が囲碁で有名になりましたが、 機械学習で用いられるニューラルネットもまたパターン認識の世界です。

 

AIというと難しそうに聞こえますが、人間のパターン認識能力を簡易的に真似した機械ですので例としては最適です。

といいますのも、人間の神経細胞そのものがパターンによって電気信号を伝達するという構造をしているので脳とパターンと機械学習は切っても切れない関係にあります。

 

どうやってパターン認識しているのかを簡単に説明します。

神経回路の大まかな流れは①樹状突起(じゅじょうとっき)→②神経細胞体(しんけいさいぼうたい)→③軸索(じくさく)→④伝達物質(でんたつぶっしつ)の結びつきで構成されており、

樹状突起へ入力された信号によって神経細胞体がその信号がどの程度の重要なのかを判断し、次の神経へ伝達するか否かを決めるという構造です。

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この細胞体が判断する信号の重要度を「重み」としてAIでは学習させています。

 

重みとは、例えば「家の外へ出る」という行動をする場合に

「水やり」「草引き」「飲み屋」「上司からの呼出し」「火事」

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という選択肢があった場合、どの程度外へ出る理由として適切かを数値で表すと、( )内が点数↓となります。

「水やり(3)」「草引き(2)」「飲み屋(5)」「上司からの呼出し(4)」「火事(10)」

それをグラフにすると、下図になります。

点数の合計が5点以上(図のオレンジライン以上)であれば「外へ出る」という選択をすることにします。

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・「水やり」だけでは外へ出る気がしませんが、「草引き」が入ると合計5点となり外へ出ます。

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・「上司からの呼出し」では5点に届きませんので理由をつけて断るという選択肢になりますが、帰りに「飲み屋」へ行くという用件を入れた場合は9点となり外へ出ます。

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・火事の場合には他に用件が無くとも外へ出ます。

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このように、神経細胞では「あっちからの信号は3点」「こっちからの信号は○点」と決めて、「合計で何点になったら次の神経へ信号を送るか」というパターンを決定することで学習を行います。

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このような重みを付けた神経細胞が幾重にも層になることでネットワークが構成され複雑な学習が行われます。この層が深いものをディープラーニング(深層学習)と呼ぶようです。

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機械学習はこの層をシミュレートしますが、人間のような複雑な脳はまだシミュレートできていません。といいますのも、人の脳神経細胞は140億個とされており、現在スーパーコンピューター「京(70万個のCPUコア)」で2013年に脳神経ネットワークを再現できたものが最大で、17億3000万個の脳神経細胞を10兆4000億個のシナプスで繋いだというシミュレートに成功しています。

このスーパーコンピューターでの実験では生物学的に1秒に相当する脳神経のシミュレートを40分かけて実現しています。

 

2018年3月には人の脳全部をシミュレートするアルゴリズムの開発に成功しています。また、CPUの研究ではハニカム構造にレーザー光を当てるという手法でCPUが従来の100万倍速くなるという手法をミシガンカレッジオブエンジニアリングのチームが発表していますので、いよいよ本格的にSF映画に出て来るようなASI(人工超知能)の登場も近いのかとも思ってしまいます。

しかし、人の脳の構造もまだまだ未解明な部分は多く、近年これまで受容器の役割だけと思われていた樹状突起のスパイク(電気信号)が実は神経細胞体が生み出すと考えられていたスパイクの10倍も生み出していたと判明しました。樹状突起神経細胞体の100倍ものボリュームを持つので、これが本当だとすると単純に脳の能力はこれまで考えられて来た100倍ものキャパシティーを持つ可能性があり、脳神経科学の常識が覆されることになます。それに伴いAIの構造もまた見直されることになるでしょう。

 

話がAIにまで及んでしまいましたが、パターン認識とは細胞レベルでこのようなパターンによる活動をしており、これから人が更なるパターンを発見、活用しようとするとAIは欠かせないツールとなることでしょう。

既に人では認識不能なパターンをAIが認識できてしまったという事実がありますので、AIは現在早期癌の発見や薬の処方や調剤など医療の分野で活用が期待されています。

 

参考

「京(けい)」を使い10兆個の結合の神経回路のシミュレーションに成功 | 理化学研究所

ヒトの脳全体シミュレーションを可能にするアルゴリズム | 理化学研究所

Lasers Could Make Computers 1 Million Times Faster

Brain is ten times more active than previously measured - Science Bulletin